「ご……ごめんなさい。僕、王様のそんな深い心も知らないで、こんな……王様を試すようなことして……」
瞬は涙ながらに、氷河国王に自分の浅はかさを謝罪しました。

氷河国王はといえば、軟禁の理由をうまくこじつけられたと内心で大喜び。

やはり、真実というものは強いものです。
氷河国王の言葉の後半には、少しばかり嘘が混じっていましたけれど、まあ、それは嘘も方便というものでしょう。

「おまえなら、わかってくれると思っていたよ、瞬」
「お……王様……!」

白々しく言ってのける氷河国王に感動した瞬は、次の瞬間、泣きながら彼に抱きついてしまっていました。

もちろん、瞬はあの空気の服しか着ていません。

氷河国王の心臓は、途端にばくばく騒ぎ始めました。
身体中の血が逆流して――特に、氷河国王の身体のとある部分が、上を下への大騒ぎです。

氷河国王は、慌てて瞬の肩を押しやりました。
「し……瞬……。は……離れろ……」
「王様?」

これは、氷河国王にとって、夢にまで見たシチュエーションでした。
そのはずなのに、氷河国王は、瞬を遠ざけずにいられませんでした。
そして、遠ざけずにいられない自分自身を、氷河国王は訝ってしまったのです。

氷河国王は、おそらく、自分を善人だとは思っていなかったので、自分の欲望を満たすことより、瞬を傷付けたくないという望みを優先させようとする自分の気持ちが理解できなかったのかもしれません。

「王様、何だか、お辛そう……」
「……じ……自分を偽るということは辛いことなんだ……」

氷河国王の言葉には、実感がこもっていました。
その言葉を正確に理解したとは思えない瞬が、けれど、小さく頷きます。
「そう……なんでしょうね。僕、何もできなくて……。せめて王様を慰めて励ましてあげられたらいいのに……」

「な……慰めてくれるのか?」
氷河国王の声はかすれ、上擦っていました。

「もちろんです! 僕にできることなら、何だってします!」

「できる。おまえにしかできない慰め方がある……んだが……」
「ほんとですか! 教えてください!」
「う……」

教えてしまっていいのだろうか? ――と、とりあえず氷河国王は迷いました。
本当に、ちゃんと悩みました。
けれど、本当に瞬に“それ”を教えてしまっていいのか――と悩む心よりも、氷河国王の身体は迅速だったのです。

氷河国王の手は、恐る恐るではありましたが、氷河国王自身が意識するより先に、瞬の首筋に伸びていました。
そして、その手は、ゆっくりと瞬の裸の胸へとおりていったのです。

「あ……っ!」
微妙な場所に触れられて、瞬が小さな声を洩らします。

「お……王様……?」
「氷河でいい」
「氷河様、あの……」

瞬が何か尋ねてくる前に、氷河国王は、その手を更に下に運んでいました。
「おうさ……氷河様、あの……んっ……!」

「おまえに触れていると、それだけで、俺は慰められるんだ」
「そ……そうなんですか? だったら、僕、いくらでも……あっ……あの、でも、そんなとこ……あ、ん……あ、いや…っ!」

「瞬……」
「氷河様、でも、そんな、あ……そんなとこ、恥ずかし……や……いや……」

瞬は、口では、まあ色々言っていましたが、それでも、氷河国王の手を振り払ったりすまいとして、必死に耐えてくれていました。

こうなっては、もう我慢できるものではありません。
実に情けなくあっさりと限界を超えてしまった氷河国王は、我を忘れて、瞬の上にのしかかっていったのです。
「氷河様…… !? 」

「頼む、このまま俺を慰めてくれ」
「あ……あの……?」

瞬にそれ以上何かを言わせまいとして、氷河国王は、素早く瞬の唇を自分の唇でふさいでしまいました。

そして――。


そして、氷河国王は、彼に何かされるたびに恥じらいの声をあげる瞬に、あんなことやらそんなことやらを、思いっきりしでかしてしまったのでした。





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