嫁ぐ準備を整えたアイルランドの姫君が、侍女をひとり連れて、コーンウォールに向かう船に乗り込んできたのは、それから2日後のことでした。 コーンウォールの未来の王妃は、華奢で小柄な全身を薄いヴェールで覆い隠していました。 アイルランドには、花嫁は夫となる相手以外には顔を見せないというような決まりでもあるのだろうと考えて、氷河は彼女の顔を確かめようともしませんでした。 その仕草からは香るような気品が感じられましたし、船に迎えた花嫁が高貴な育ちなことに疑いはありません。 隠しているものをわざわざ暴く必要もないだろうと、氷河は思ったのです。 それに、氷河が興味があるのは、コーンウォールの未来の王妃などではなく、未来の王妃が知っているだろう瞬についての情報でしたから。 |