民意に後押しされたマスコミの力は強大だった。

テレビ、ラジオ、書籍、インターネット、ありとあらゆるメディアの力は政府をも動かし、氷河は彼がマスコミに登場して2週間も経たないうちに、特例で日本国籍を回復できてしまったのである。

氷河の母親に海外亡命を余儀なくしたソヴィエト政府が崩壊していたことも、氷河には有利に働いた。
ロシア政府は、革命時に革命政府によって没収された公爵家の財産の一部の返還を氷河に申し出てきた。
革命前のロシアの支配層の富裕さを思えば、それは、本来氷河の母親が相続するはずだった資産のごく一部にすぎなかったのだが、それでもそれは一般的な日本人の生涯賃金をはるかに凌駕する額だった。

ロシア政府にしてみれば、これで北方4島返還問題を少しでも先送りできれば万々歳というところだったのかもしれない。





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