「大きな人間って不思議だよね〜」

小人たちは、城戸邸の花壇の紫陽花の木の根元で、おやつタイムを楽しんでいた。
庭に出てきた氷河と瞬の姿を目で追いながら、それでも小人たちは、残り少なくなったケーキのかけらを頬張る手を止めようとはしない。

「ほんとだよねー。どんなことでも叶えてあげるって言ってるのに、別に魔法の力なんか借りなくたっていいようなことを願うよね」

せわしなくケーキのかけらを口に運びながら、小人たちが全員揃って首をかしげる。


瞬が、3番目に願ったこと。

それは、
『可愛い小人さん、可愛い小人さん。僕は、氷河が僕のこと、どう思ってるか知りたい。どうか教えてください』
――だった。

無論、その願いはすぐに叶えられたのである。


「でも、いいじゃない。ああいう願い事は、僕たちも叶えてあげた後、気分がいいし」
「そーだよねー。お金持ちになりたいとか、不老不死になりたいとか、世界を支配したいとか、そういうこと願った人たちって、結局、みんな最後には不幸になっちゃったしね……」

かつて自分たちに親切にしてくれた人たちの願い事の結末を思い出して、小人たちは、少しばかり暗い表情になった。

親切で優しい人たちが、賢明で無欲だとは限らない。
きっかけ一つで、人は豹変する。
豹変する様を、これまで小人たちは幾度も見てきたのだ。





【next】