シュンは、細やかな気遣いと辛抱強さを持ち合わせた、非常に優秀な道案内でした。

光を失って、ただ歩くことさえままならないヒョウガを、シュンは必死に支えてくれました。
キオス島を出る船の上で、風だけが吹く平原で、険しい山の隘路で、シュンは、ヒョウガの側を片時も離れずに、そして、愚痴一つ零さずに、ヒョウガを励まし続けてくれたのです。

徐々に暗闇に慣れ、障害のないところなら勘で歩けるようになり、少し心身に余裕も出てきた頃には、それまで自身の不運にだけ結びつけられていたヒョウガの感情にも変化が表れてきました。
ヒョウガは、自分は決して世界のすべてに見捨てられてしまったわけではないのだと、思うことができるようになっていたのです。


憎しみの感情から解き放たれると、思い出されるのはメロペ姫のことでした。
他のすべては――空の色も、北の海の色も――鮮明に思い出すことはできないというのに、ヒョウガは、メロペ姫の姿だけは、暗闇の中に鮮やかに思い浮かべることができました。

いつも弾むような口調でヒョウガを励まし続けてくれるシュンは、けれど、ヒョウガの口からメロペ姫の話題が出ると、ふっと黙り込んでしまうのでした。






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