新しい一日の最初の陽光は、ヒョウガの目に光をもたらしました。

久し振りに触れる光の世界に目がくらみ、ヒョウガは視力を取り戻した途端、反射的に二つの目を閉じました。
それほどに、世界は明るく輝いていたのです。

眩しさに驚いた目が、徐々に光に慣れてきます。
そして、まともに両目を開けていられるようになった時、ヒョウガは気付いたのです。
自分の目の前に、これまで片時も忘れたことのなかった人の姿があることに。

「姫、なぜここに」
「え?」
「神が運んでくれたのか? これは、神のはからいか? 視力を取り戻した途端に、姫の姿を見ることができるとは」

「?」
自分に向かって差し出されるヒョウガの手と言葉の意味が理解できなかったシュンは、言葉もなくその場に立ち尽くすことになりました。

「すぐにでも、姫を抱きしめたいのですが、その前に、俺は──」
シュンの戸惑いに気付いた様子もなく、すぐに、ヒョウガの視線が何かを探すように、太陽神の館のあちこちをさまよい始めます。

けれど、そこには、ヒョウガが一時も忘れたことのない人の姿と、太陽神らしい若い男の姿があるだけでした。
「シュンは……どこだ?」

ヒョウガの目の前にいる自分の居場所を尋ねられて、シュンの混乱はますます大きくなるばかりです。

“シュン”を見付けることができないまま、ヒョウガは、シュンに向かって言いました。
「姫、俺はおそらく、シュンがいてくれなかったら、盲いた時に死んでしまっていただろう。この旅に出ることさえ不可能だった。姫もシュンに礼を言ってください」

「…………」
もしかしたらヒョウガの目はまだ治っていないのではないかと、シュンは訝ったのです。
二人の旅が徒労に終わったことをシュンに知らせないために、ヒョウガは無理に光を取り戻した振りをしているのではないか――と。
でなければ、あの華やかな美貌の姫君とシュンを混同するなど、決してありえないことでした。

けれど――そうではないようでした。
ヒョウガの視点は、その場にいるシュンと太陽神とに、些かの躊躇もなくしっかりと結ばれていたのです。






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