闘いの時の記憶がおぼろげなのは、いつものことだった。
闘いの始まりのことは憶えているんだけど、闘うことを迷ったりためらったりしていると、自分の命が危うくなると感じたあたりから──本気で闘い始めた頃から──闘いの終わりまでの記憶は、僕の中にはいつも明確には残っていない。

ただ敵を倒したという“感じ”だけは残っていて、それがいつも僕に罪悪感を抱かせていた。


僕が目覚めた時、世界は夜ではなかったと思う。
部屋の窓からは、夜には感じられない昼間の匂いと風とが入ってきていた。

ただ、僕の目は、闇をしか見ることができなかった。

僕がベッドの上で目覚めると、氷河が──どうやら、ずっと僕を看ていてくれたらしい──、僕が闘いで視力を失ったことを知らせてくれた。

「瞬、おまえの目は、もう何も見ることができない」

僕にそう告げた氷河の声には、まるで抑揚がなかった。






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