ある夜。
僕は、夜中に目が覚めた。

今の僕には夜も昼も関係がないんだけど、でも、感じられる明るさが、昼と夜では全く違う。
そして、やはり、夜は、闇の国の住人にも不安を運んでくるようにできている。

僕を目覚めさせたのは、人気のなさ、だった。
氷河の気配が感じられない。

僕は自分のベッドを出ると、壁を伝って廊下に出て、氷河がいるはずの隣室のドアの前に行った。
小さくノックをして、氷河の名を呼ぶ。
返事はない。

氷河を呼ぶ僕の声は段々大きくなっていって、それは最後には悲鳴になっていた。

氷河がいない。
呼んでも、僕の側に来てくれない。
こんなことは、ふたりきりの生活を始めてから、一度もなかったことだった。

部屋のドアを開けて、その中に入り、辺りを手でまさぐる。
僕は、何かを――スタンドかラックを――倒してしまったようだった。
夜の静寂の中に、大きな音が響く。
でも、それでも、氷河の気配や声は、僕の側に来てくれない。

氷河は、ここにいないんだってことが、わかった。
僕は、急に、自分が世界中にたったひとりで取り残されたような錯覚に襲われた。

心細さが、孤独感を伴った恐怖に変わり、僕は、その場にへたりこんで泣き出してしまっていた。






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