「瞬、何の真似だ、それは?」
瞬の仲間たちを代表して、とりあえず氷河が尋ねる。

「それ?」
瞬は、仲間たちの動揺と驚愕に気付いていないようだった。

「いや、だから、脚をそんなに開くのは──」
「あ、これ? うん、この方が男らしくていいかなって思って」
にこやかにそう答えてから、瞬は、すぐに、
「この方がいいと思ったんだぜ」
――と言い直した。

「…………」
いったいなぜ瞬が突然“男らしさ”などというものに挑戦しだしたのかはわからなかったが、氷河は、それをあまり好ましいことだとは思わなかった。
星矢、紫龍も同様である。

「まあ、やめておけ」
「どーして? みんなはそんなふうに座ってるじゃない」
「おまえに脚を開かれると、おまえが昼間から俺を欲しがってるのかと、俺が期待する」
「あ……!」

氷河にそう言われた瞬が、頬を朱の色に染めて、すぐさま両の脚をぴたりと閉じる。
星矢と紫龍は、瞬のその様子を見て、なぜか安堵の胸を撫でおろし、そして、その場はまもなく、瞬の脚が開かれる前の状態に戻った。
すなわち、平和で退屈な晩夏の午後に。



その時はそれで済んだのである。
そして、それが、嵐の前触れだった。






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