「しかし、アメリカの地下鉄あたりに乗ってみろ。今時、脚を揃えて座ってる女性なんて、ひとりもいないぞ」
瞬ではなく氷河に倒された星矢が、不屈の根性で立ち上がるのを確かめてから、紫龍は、その根性を見習って、再度攻撃に出た。
「脚を広げて座れば男らしいという考え方が、そもそも時代錯誤だぞ、瞬」

「まったくだ。だいいち、瞬。おまえは女の子みたいなんかじゃないぞ」
氷河ももちろん、(自分が倒した)主役にならう。

「え?」
瞬は、氷河のその言葉に、ひどく嬉しそうに瞳を輝かせた。
そして、その嬉しい言葉に続く、
「おまえは、女より綺麗だ」
のセリフで、堪忍袋の緒を切った。

「氷河のばかっ! 僕、絶対に男らしいって言われるようになってやるからっ!」
生死を共にして同じ時代を生きてきた仲間たちに、揃いも揃って、自身の決意を否定され、瞬は半泣き状態である。

「あ、おい、瞬……!」

結局、瞬は、氷河たちの必死の説得(?)にも関わらず、お茶の用意もせずに、瞬にしては乱暴な足取りでラウンジを出ていってしまったのである。






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