瞬を、細いと思ったことはあった。
しかし、小さいと思ったことはなかった。
だが、今、氷河の腕の中にいる瞬はひどく小さく、華奢で、幼かった。

こんなにも小さかったのに、あの夜、瞬は、自分の乱暴で粗野な愛撫を耐えてくれたのだ――と、今更ながらに思う。
今、氷河の腕の中にいる瞬は、強く抱きしめたなら、そのまま壊れてしまいそうなほど頼りない肢体を有していた。

否、壊れそうなのではない。
それは、壊れるのだ。
これが、あの日の瞬ならば、まもなく、この身体は。

氷河は、ぞっとしたのである。
今自分の腕の中にあるものを、それが本来あるべき場所に帰したくない、と彼は思った。

「瞬、消えるな。消えないでくれ」
死などに奪われてしまうくらいなら、自分の手で壊してしまった方がましだと言わんばかりに強く、氷河は瞬を抱きしめた。

「氷河……なの? どうして……」
氷河の胸の中で、くぐもった声で、“それ”が尋ねてくる。

氷河の外見が変わってしまっていても、瞬は氷河を氷河と認めることができているようだった。
体温か匂いか声か、それとも五感で感じられるものとは別の何かのためなのか、瞬は時空を越えた場所で出会った見知らぬ男を、それでも彼の愛した男だと感じとってくれていた。






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