シュンには、神の配偶者選びの儀式で、ヒョウガが何か細工をしたのは確かなことのように思われた。
シュンが神官になったことに、ヒョウガは憤っていたようだったし、ヒョウガなら、シュンを還俗させるために神を手玉に取るくらいのことは、良心の呵責も覚えずにやってのけるだろう。

そして、彼の思惑通り、シュンは、結局、灰色の神官服を脱ぐことになってしまった。
代わりに、純白の繻子でできた衣装を着せられる。
その時になってシュンは真剣に、馬鹿馬鹿しいと笑っていられない事態に陥った自分を自覚することになったのである。
ヒョウガは確かに、シュンを神殿の規律と機構の中から解き放してしまったが、シュンはそれとは別の檻の中に閉じ込められてしまったのだ。


シュンがこれから2年間を過ごすことになるナブ神殿は、王宮の隣りにある。
下の階の一つ一つは、それぞれ七曜の守り神に捧げられており、その最上階に、天と地の調停者ナブ神のための塔があった。
不自由のない生活が保証されるとはいえ、シュンは2年もの長い期間、この塔に閉じ込められることになってしまったのである。
それも、神の“配偶者”として。

シュンは不安でならなかった。
そもそもシュンは、神の配偶者の務めがどんなものであるのかすら知らなかった。






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