月を眺めていても、ヒョウガが戻ってくるはずはない。
シュンは、未練を誘う窓を、レバノン杉でできた落とし戸でふさいだ。
月の光を遮られ、灯りのない室内が闇で覆われる。
室内に灯りがある限り、“彼”はシュンの許にやってこない。
月や星のある夜には窓を閉じて、闇の中にある寝台で彼を待つのが、シュンの日課になっていた。
ヒョウガが帰ってきてくれないのなら“神”に、シュンは、自身の不安を晴らしてほしかった。
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