目的に向かって猛進し、その後で後悔する――のが、ヒョウガの悪い癖だった。 シュンがいつも側にいて、後先考えずに突き進もうとするヒョウガをたしなめてくれていた頃には、それで失敗することもなく、多少は慎重になることもできていたのだが、シュンと離れているうちに、彼の内に養われつつあった慎重さも失せてしまっていたらしい。 そもそもヒョウガの当の目的物が、一歩を踏み出す前の一瞬の考慮をいつも彼に促していたシュン自身だったのだから、ヒョウガに沈着を求めること自体が、無理な話だったのかもしれないが。 塔の部屋を覆い始めた早暁の薄明の中で、ヒョウガは、昨夜自分がしたことを後悔していた。 嫉妬に我を忘れ、自分の思い通りにならないことに腹を立てて、何の罪もないシュンを責めた。 心身の力をすべて奪われてしまったかのように青ざめた頬を呈しているシュンが目覚めた時、自分が彼にどう接すればいいのかを、ヒョウガは考えあぐねていた。 が、その答えが見付からないからといって、この場から逃げ出すわけにもいかない。 ヒョウガは、神殿の塔の窓際で、無言で、シュンの目覚めと、その審判の下る時を待つしかなかった。 朝いちばんのヒバリの声が、どこか遠くから響いてくる。 審判の日の朝が、本格的に始まったらしい。 ヒバリの声が途絶えた時、代わりに、シュンの声がヒョウガの耳に届けられた。 遠い空の高みでさえずるヒバリの声よりも細く力無い声だった。 「ヒョウガは……僕なんかいらないんだと思った」 「シュ……」 目覚めたシュンの最初の言葉が、偽物の神の暴力を責めるものではなかったことに、正直、ヒョウガは安堵した。 「王様になって、国を作ることに夢中になって、ヒョウガの目には、僕のことなんか見えてないみたいだった」 「俺は……おまえがいつも、街で裸足の子供たちを見ては嘆いてたから、この都をおまえの望むような、飢えた子供のいない街にしてやりたかったんだ。そうすれば、おまえはもう少し俺を見てくれるようになるんじゃないかと思った」 その目的を達成するのに最も手っ取り早い方法は、神殿に集まる富を利用することだと、ヒョウガは思ったのである。 シュンのことさえなければ、ヒョウガはもっと早くに神殿の解体に取り組んでいたはずだった。 |