スポーツで氷河の体力を奪う案の次に紫龍が提案したのは、これまたヴィクトリア朝のイギリスで考案された、実に画期的かつ即物的な道具の使用だった。 「てっとり早く、勃起抑止器具をはめてしまうという手もあるが」 「なんだよ、それ?」 「男子用の貞操帯みたいなもんだな。アレを、金属のケースにハメて、そういう行為ができないようにしてしまうんだ」 「ケース?」 「細めの鉄パイプの中に、アレをすっぽり突っ込んで、大きくならないように締めつけておくんだよ」 「そ……それは、さすがに、同じ男として忍びない……。だいいち、誰が氷河にそんなモン――」 「う……」 『誰が猫に鈴をつけるか』というとてつもない大問題を見過ごしていた自分に、紫龍は絶句し、氷河にとっては幸いなことに、その案は即行で却下された。 物理的手段は採れない。 となれば、ここはやはり、氷河から気力体力を奪う手段を考えるしかない。 そして、氷河に体力を消耗させる“スポーツ”と言えば、これはもはやバトルしかなかった。 「しかし、ヤりたくて仕方ない状態の氷河に勝てるほどの相手が、この世に存在するとも思えないが……。黄金聖闘士でも、勝てるかどうかは怪しいだろう。一輝がいればいいんだが、現状を知ったら、一輝は、氷河を疲れさせる前に殺すだろうし」 紫龍のその見解には、星矢も賛同するしかなかった。 というより、一輝の手による瞬殺ごときでは、星矢の気が収まりそうになかったのだ。 しかし、紫龍のその言葉で、星矢は妙案を思いついたのである。 「もっといい手がある」 「アテナにご出馬願うのか」 「それはいくらなんでもマズいだろう」 氷河の傍若無人に憤っている星矢も、さすがにそこまでは考えていなかった。 だいいちこれは、女神といえど10代の少女に、解決を委ねていいような問題ではない。 星矢の思いついた妙案。 それは、『(努力+友情+勝利)− 努力』。 つまり、固い友情(?)で結ばれている(はずの)黄金聖闘士たち全員による人海戦術、だった。 |
■ ご参考までに ■ 勃起抑止器具 : こんなのです。 |