「そーいや、去年の暮れにさー」
どうやら似たような疑念を、星矢も抱いたことがあったらしい。
それまで二人の会話を脇で聞いているだけだった星矢が、瞬と紫龍の会話に混じってくる。

「氷河が、まだ8時にもなってないってのに、瞬に『寝よう』とか言ってきてさー」
「ああ、俺が、まだ8時だぞとたしなめるたら、おまえは、そういうことじゃなさそうだと言って、深刻な顔をして、氷河と部屋を出ていった」

「あの時は、氷河、僕に相談事があったんだよ」
それがなぜ、紫龍や星矢には“不思議”なことなのか、瞬には、そちらの方が理解できなかった。

「あと、あれ! あの時も変だったな。去年の秋に、氷河の奴が、流行の先取りして風邪ひいちまった時! 熱が39度近くなって、おまえ、それまでは、すごく心配そうに甲斐甲斐しく氷河の看病してたのに」
「ああ、憶えている。おまえが突然──」

それは瞬の記憶にも残っていた。
あの時、瞬は、あることに気付いて、急に腹立たしくなり、
『氷河のばかーっっ! こんな時に何考えてるのーっっ !! 』
と大声をあげて、病人の頭の下から乱暴に抜き取った枕を、氷河の顔面に叩きつけるという暴挙に及んだのである。


「だって、あの時は、氷河が……!」
事情を説明しようとした瞬は、しかし、咄嗟に、それ・・を口外してしまっていいものかどうかを迷い、口をつぐんだ。






【next】