その翌日からだった。
氷河が自分の股間──すなわち、目──の隠蔽工作を開始したのは。

しかも、そのやり方が、実に気をてらっていた──本人はそんなつもりはなかったのかもしれないが。

すなわち。
氷河は、ミステリー解明の翌日から、どこで入手してきたのか、突然銀色の仮面を着用し始めたのである。
それは、アルファベットのTの字を逆さにしたような、何とも奇妙な形のマスクだった。
よくある目だけを隠すマスクに、カブトムシのツノがついたような形状の。

最初、そのマスクをつけた氷河の姿を見た時、瞬は、どうして自分はこんな妙な男を好きでいるのだろうと、心の底から、我と我が身を呪い、悔やんだのである。
「氷河……それ、いったい……」

瞬に尋ねられた氷河が、瞬の複雑怪奇な胸中に気付いた様子もなく、得意げに言う。
「こうやって目を隠せば、俺が何を考えているのかわからないんだろう?」
「わかった方が便利じゃない」
「魂胆を見透かされているようで、気分が悪いんだ」

股間を見透かされている男としては、それは、ある意味、当然の防御策だったのかもしれない。
しかし、どうせなら、もう少し常識的な防御策を講じてほしいと、彼の仲間たちは思ったのである。
「アタマ隠して尻隠さずの典型じゃないか。スカートでも穿いて、股間を隠さなきゃ意味ないだろ」

瞬の鋭い指摘を、しかし、氷河は鼻先で笑ってみせた。
「瞬は、人の股間をまじまじと見るなんて不躾なことができるほど恥知らずじゃないからな。これで、俺の下心の隠匿は十分だ」

非常識なくせに、氷河は妙なところで読みが深い。
自信満々で言い放つ氷河に、瞬たちは返す言葉も思いつかなかった。






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