氷河はすぐに周囲の人間の嘲笑に耐えられなくなるに違いないと踏んで、瞬は、最初のうちはは、怪しい仮面をつけた氷河を見ても苦笑しているだけだった──その苦笑は、いつもかなり引きつってはいたが。 しかし、氷河の仮面装着期間が1週間を超える頃になると、瞬もさすがに笑ってばかりではいられなくなったのである。 やがて、氷河のあまりの非常識に耐えられなくなった瞬は、専守防衛の立場を捨て、攻撃に転じることを決意した。 瞬の、憲法第9条放棄の時だった。 そして、突然、自衛隊に歯向かわれる立場に立たされた氷河は、その軍事力の強大さに、大きな打撃を受けることになったのである。 瞬が、氷河への攻撃を開始した夜。 星矢は、瞬の部屋のドアの前に呆然として突っ立っている氷河の姿を見い出すことになった。 氷河はその手にシャツを持っていて──持たされていて──要するに、彼は上半身裸だった。 「いったいどーしたんだよ、こんな夜中に」 関わり合いたくはないが、出会ってしまったからには、見て見ぬ振りをするわけにもいかない。 星矢は目いっぱい嫌そうな顔をして、あくまで礼儀として、氷河にそう尋ねた。 氷河の答えは、聞く前から、おおよそわかっていたのだが。 「知らない人としてるみたいで嫌だと言って、瞬にベッドから追い出された」 「そりゃそーだろ」 当然である。 むしろ、氷河がこれまで そもそも目隠しプレイというものは、普通、受け側の視界を奪って楽しむプレイなのだ。 「その変なモノを外せばいいじゃないか。だいたい既に行為に及んでいるのに下心も何もないだろーが」 「下心に限らず、考えを見透かされるのは男の沽券に関わる」 「沽券じゃなくて股間だろ」 あくまでも礼儀として、星矢はお約束の突っ込みを入れた。 しかし、それでも、氷河は、仮面を外して瞬のベッドに戻る気配を見せない。 星矢は、氷河の根性に恐れ入って、そそくさとその場を立ち去ったのである。 股間を隠して、瞬に同衾を拒まれていたら、それこそ本末転倒もいいところだと呆れ果てながら。 |