嘘をついてる罪悪感──に、氷河は苛まれ続けていた。 だが、瞬を“恋人”として抱きしめることをやめることもできない。 記憶を失う以前も、失ってからも、瞬は、氷河自身のハートランドの住人だった。 その大切な人を失うことも、傷付けることも、氷河はしたくなかったし、それは彼にはできないことでもあった。 そんな氷河とは逆に、瞬の表情は、日を追うにつれて落ち着いたものに変わってきていた。 もしかしたら、瞬は、その心の内に自分のハートランドを取り戻したと思い込んでいるのかもしれなかった。 瞬は、自分が一度は失ってしまったハートランドには、氷河がずっと住んでいたものと信じている。 そして、自分は、自分の大切な国の大切な住人を取り戻したのだと思い込んでいる。 氷河の腕の中にいる時、瞬は、ひどく満ち足りているように見えた。 瞬の中にあった不安はすっかり消えてしまったように、氷河には──星矢たちにも──見えていた。 |