瞬が、その失言──それは失言だったろう──を口にしたのは、そんなふうに、氷河と瞬が、一見した限りは穏やかな日々を過ごすようになっていたある日のことだった。

ラウンジに置かれているテレビが、極北に住む動物たちの姿を映し出している。
白いアザラシの子供が、白い大地の上で仲間たちとじゃれあっていた。

「もしかして、氷河のハートランドには、ああいう子たちも住んでいるのかな」
テレビの画面を見ながら、瞬はそう言ったのである。

氷河は、瞬に、自分が瞬の恋人だという嘘以外、彼自身に関することを何ひとつ教えていなかったというのに。






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