“子供”の相手は疲れるものである。
動かすのも億劫なほど疲れきった身体が──肺と心臓が──、氷河と身体を交えていた時よりも活発に活動している事実が、瞬は不思議だった。

相当の時間が過ぎてからやっと、瞬の心臓が平生のテンポを取り戻す。
それを確かめてから、瞬は、瞬よりずっと早く身体の興奮を鎮め終えていた氷河の横顔に、視線を向けた。

「氷河、まだ機嫌が直らないの」
これ・・だけの男と言われて喜ぶ男がどこにいる」
そう言いながら、これ・・をすることで、鬱憤を晴らそうとすることに、氷河は矛盾を感じていないのだろうかと、瞬は胸中で嘆息した。

「氷河は、僕の信頼がほしいの」
「当たり前だろう」

氷河の中では、瞬への愛情と信頼は並立して存在していた。
氷河は、瞬と身体を交えることで、瞬を求めている自分を表すことが多かったが、むしろ彼の中では、瞬を求める気持ちより、瞬を信じる気持ちの方が大きいくらいだったのだ。

「愛情も信頼も、望んで手に入るものじゃないよ」
「わかっている。俺がガキだってことは。俺は結局こんなことしかできないんだから」
「…………」

自身を“子供”と認めた時、その人間が“大人”に見え始めるのはなぜなのだろう。
瞬は、自分の隣りで目を閉じて、綺麗な横顔の線を惜しげもなく晒している氷河に微笑した。






【next】