ある日、瞬は、思い切って、自分の傍らに仰臥する氷河の頬に触れてみた。
予想していた通りに、それは冷たかった。

もしかしたら、“瞬のものでない氷河”よりも美しいかもしれない“瞬だけの氷河”は、しかし、頬だけでなく肩も腕も胸も脚も、大理石の彫像のように、瞬を拒む。
恐る恐る性器にも触れてみたが、それは冷たく黙したままで、何の変化も示さなかった。

これまでは、氷河の姿を見るだけで身体が疼きさえしたのに、今は、瞬自身の身体が、無言の氷河のそれよりも冷えていく。

そんな時の氷河を知らない瞬には、自分の氷河を形作れなかった。






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