氷河が、自分の恋を忍ぶ恋のままにしておいても守ろうとしている、彼の師の立場と面目。 氷河がそうするだけあって、アクエリアス家のカミュは悪い人ではなさそうでした──いい人のようでした。 カミュという人間の人となりを知った瞬は、ですから、ちょっと期待したのです。 この人なら──ネロとパトラッシュの悲しい生と死に、素直に涙することのできるこの人なら──いつかは、自分と氷河の恋を認めてくれるようになるのではないか──と。 けれど、世の中は、そうそううまくはいきません。 もしこの世の中が、良い方にだけ転がるようにできているのなら、ネロとパトラッシュの悲劇もなかったことでしょう。 そうして、事件は起こったのです。 |