氷河と出会った時、どうして自分がそんなに──まるで火がついたように激しく──泣き出してしまったのか、瞬は自分でもよくわかっていなかった。
氷河は瞬だけを睨んだわけではなかったし、泣かずにいられないほどの敵意や憎悪を、初めて会った人間に彼が向けるはずもない。

そう考えると、どう判断しても、あの場で無礼を働いたのは氷河ではなかったことになる。
そういうわけで瞬は、自分は氷河に嫌われただろうと思い込み、落ち込み、そして、氷河を避けることを余儀なくされた。

瞬にできるのは、距離を置いた場所から、氷河に気付かれぬように、その金色の髪や青い瞳を盗み見ることだけ。
遠目にもきらきらと輝いて見える氷河の金髪や青い目を、間近に見ることができたらどれほどいいだろうと、切ない溜め息をつくことだけだった。






【next】