ヒトとDBの共通点。
それは、好奇心が旺盛であるということだった。
空前絶後の大スキャンダルは、ヒトとDBの間の垣根を取り払うことに一役買い、両者がそれぞれの立場や主義に基づいて議論を交わす機会を増加させた。

交流は、誤解も生むが、理解も生む。
一人の“人間”として相対した時、DBとヒトは実は大差のない存在だった。


DBだと信じられていた者がヒトで、ヒトとして暮らしていた者がDBだった──。
世紀の大スキャンダルは、結局、問題視すべき焦点を定められず、氷河の進退問題はうやむやのまま現状が維持されることになった。

二人の恋は、ヒトにもDBにも快いものだったのである。
最高のDBと言われていた氷河がヒトだったことは、ヒトの優越感をくすぐり、劣等感を慰撫した。
実はヒトだった氷河が、DBである恋人に誠意を示すために、すべてを捨てる覚悟でカミングアウトしたことは、DBにも同じ効果をもたらした。
DB、ヒトを問わず、特に女性はそういうものが好きらしい。

規模の大小、場の公私を問わず、喧々諤々の論争が繰り広げられた後で、氷河と瞬の同居は、諮問委員会の承認を得た。

以後、ヒトとDBの婚姻が増え、緩やかに両者の混血が進むことになる。
公的機関への登用適性検査をヒトが受験できるように、法が改正されたのは、氷河のカミングアウトからわずか半年後のことだった。

その第一回検査でのヒトの合格者の数は、極少ではあったがゼロではなかった。
ヒトの意欲と努力と情熱が、生来の才能と能力を凌駕する可能性が示されたことになる。






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