パティシエ。
フランス語で『菓子職人』という意味である。
製菓器具・設備の使い方を始め、デコレーション技術などの洋菓子作りの技術、時には、練切等の和菓子作りの技術、更に、製パンの基本行程などを専門的にマスターした人間の総称。

パティシエになるためには、特別な資格は必要ない。
“製菓衛生師”という国家資格をとることが一般的な道ではあったが、それは人がパティシエたるための必要条件ではなかった。
つまり、自分はパティシエだと名乗るだけなら、今現在の氷河にも可能なのである。

──ということを、氷河は、『パティシエになりたい』という実に単刀直入なタイトルのバティシエ入門書を購読して、初めて知った。
その書籍には、お菓子の歴史・分類、お菓子業界の現状や求められる人材像の他に、有名パティシエたちの経歴が記載されていた。
彼等のほとんどが、国内外の有名ケーキ店で数年間の修行を積み、その上で自分の店をオープンさせている。

してみると、瞬好みのケーキを作るパティシエになるためのいちばんの近道は、パティシエ・エキスパートコースだのパティスリー・オーナーコースだのパティスリープロコースだのと、いったいどこがどう違うのかわからないコース満載の調理師学校に通う必要はなさそうである。
瞬を夢見心地にさせたあのケーキを作ったパティシエに弟子入りするのが、夢実現への直路だと、氷河は判断した。






【next】