見舞いに行くと、瞬は、笑顔で俺を迎えてくれた。
病院のベッドの上にいる瞬は、ひどく痩せてた。
入院してたった2日でこんなに痩せるはずがない。
多分、俺は、ずっと以前から続いていた瞬の身体の変調に気付かずにいたんだ。

「アテナの聖闘士が情けないね」
瞬は、そう言って笑った。

沙織さんは、医者に告知させたんだろう。
瞬の強さを信じて。
期待に応えて、瞬は、自分の命の限界を知らされても冷静だった。

瞬は、これまでだっていつも笑ってた。
笑ってる奴だった。
けど、でも、それは、こんな笑顔じゃなかった。
本音を言うと、この秋が終わる頃には、俺の前から瞬の姿は消えている──なんて馬鹿な話、俺は全然信じてなかった。
でも、瞬にそんなふうな気弱な笑顔を見せられたら、なんとなくその馬鹿な話は冗談なんかじゃないのかもしれないって気がしてきて、俺はぞっとした。

何て言葉をかけたらいいのか、わからない。
『充実した数ヶ月を送ってくれ』なんて、言えるわけがない。

結局、俺は、何も言えなかった。






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