「今年の冬は寒いんだって。雪もたくさん降るかなぁ……。そしたら、みんなで雪合戦したいね、子供の頃みたいに」 「秋植えのスノーフレークの球根が、そろそろ出てると思うんだ。春には、あの花を見ないと気が済まなくて……氷河、買ってきてくれない?」 最初は、そんな些細なことだった。 瞬は、秋が終わった後のことを語りだした。 瞬のいる冬、瞬のいる春のことを。 瞬は──自分の死を忘れたわけじゃなかっただろう。 ただ、瞬は、自分の生を──自分が今生きているってことを思い出しただけなんだ。 生きている人間が忘れがちな、でも、何よりも大切で重要な、その事実を。 |