そんなふうに切羽詰った日々の連なりの果てのある日。 耐えることに耐えかねた氷河王子は、瞬王子を抱きしめて、呻くように叫びました。 「俺は、一度でもおまえを俺のものにできるのなら、死んでもいい!」 氷河王子は大人ではなく、いわゆる青少年。 迸る若さや情熱を耐えるのにも限度というものがあるのです。 自分の死後、誰かが瞬王子に言い寄るのが嫌で、これまで必死に我慢し続けてきましたが、この我慢が一生続くのだと思った瞬間に、氷河王子の理性はブチ切れてしまったのでした。 「氷河……」 ブチ切れた氷河王子の理性を優しく結び直してくれたのは、瞬王子でした。 「死んでもいいなんて、そんなこと言わないで。氷河がいなくなってしまったら、僕は一人でどうすればいいの」 「瞬……」 それが自分だけのことなら、氷河王子は死んでもよかったのです。 瞬王子への愛を貫いて死ねるのなら、氷河王子はむしろ本望でした。 そう思えるくらい、氷河王子の迸る若さは切羽詰まっていました。 けれど、その後に一人残される瞬王子のことを思うと──氷河王子は自暴自棄な行動に走ることはできませんでした。 生まれた国から遠く離れた北の国で、ただ氷河王子のためだけに、瞬王子は生きているのです。 自分の命より大切な命を残して、一時の情熱に身を投じることなど、まさに論外。 氷河王子の命は、氷河王子だけのものではなかったのです。 氷河王子が、勝手に終える時を決めていいものではなかったのです。 「我儘を言った。すまん」 冷静さを取り戻した氷河王子は、瞬王子に謝罪をして、キスをして、優しくその肩を抱き、そして──瞬王子に触れていた手を離し、自分の部屋に戻りました。 愛する人の側にいることは辛く、愛する人と離れていることは、なお辛い。 今夜もまた二人は、その辛い夜を、別々の部屋で耐えるのです。 氷河王子は、カニが憎くてたまりませんでした。 |