「そうか。そんなにヤりたいのか」
「当たりまえだっ!」
美貌に知恵に勇気その他、妖精たちの祝福を受けた氷河王子は、とても美しく、とても勇敢で、そして、とても正直な王子様でした。
正直は美徳──のはずです。

実際、カニ好きの妖精は、氷河王子の正直さに深く感動したようでした。
彼は、なぜかとても機嫌のいい様子で、氷河王子に呪いを解くチャンスを与えてくれたのです。
「よかろう、では、その正直さに免じて、おまえに一度だけチャンスをやろう。今から、明日の朝日が昇るまで、おまえが××せずにいられたら、おまえの呪いを解いてやる」
「なに?」

カニ好きの妖精の持ち出してきた呪いを解く条件を聞いて、氷河王子は大層驚いたのです。
氷河王子にとって、瞬王子(との××)は、とても価値のあるものでした。
かぐや姫だの小野小町だの、自分との結婚の条件に無理難題をふっかけた姫君は世に大勢いますけれど、その姫君たちの誰もが瞬王子(との××)ほどの価値は有していなかったに違いないと、氷河王子は信じていました。
ですから、瞬王子(との××)を手に入れるための交換条件として、カニ好きの妖精は尋常の人間には到底成し遂げられないような条件を突きつけてくるだろうと、氷河王子は思っていたのです。

ミッキー鼠の皮衣を持って来いと言われるか、シャカの御石の鉢を持って来いと言われるか、あるいは、551蓬莱のぶたまん100万個、もしかしたら、7つのドラゴンボールを10セット、最悪、燕の子安武人を連れてこいと言われたらどうしよう──なーんてことを考えて、氷河王子は内心 戦々兢々していたのです。
だというのに──。

あまりに簡単すぎる呪い解消の条件に、氷河王子はしばし呆けてしまったのでした。






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