術解きには、大した時間はかからなかった。
それは氷河自身が望んでいることであり、それゆえに、彼の心の中には、術を解かれることへの抵抗は全く存在しなかったのだから。


「瞬、どうして泣いてるんだ」
“大人”に戻った氷河が、最初に口にした言葉がそれだった。

「氷河が氷河に戻ってくれたのが、嬉しくて寂しいから」
潤んだ瞳で本心を告げた瞬を、氷河が怪訝そうな目で見おろす。

「まー、よかったよかった」
「これで、瞬も、子守りから解放されるな」
星矢と紫龍からの祝辞は、“大人”に戻った氷河を祝うためというより、手の焼ける可愛い子供を失ってしまった瞬を励ますためのものだったかもしれない。






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