ともあれ、そうして迎えた感動の朝。
天気は上々。秋晴れの一日を予想させる やわらかく暖かい陽射しは、幸福な秋の朝の始まりとしては申し分のないものだった。

俺は、当然、瞬との後朝きぬぎぬの過ごし方も、事前に色々と計画していた。
朝の光の中で恥ずかしそうな眼差しを俺に向けて幸せな微笑を浮かべてみせる瞬の髪を撫で、クサいセリフを二つ三つ吐き、瞬と××できて俺がどんなに嬉しかったか、瞬がどんなに可愛らしかったかを伝え、あわよくばもう一発──もとい、状況によっては愛の再確認をすることもあるかもしれない──等々のことを、俺は考えていたんだ。

だというのに。
だというのに、俺が目覚めた時、俺の隣りに瞬はいなかった。
俺は、一瞬、夕べのことは、俺が瞬に恋焦がれるあまりに見てしまった夢だったのではないかとさえ思ったのである。
まあ、夢の中で瞬と一晩を過ごすなんてことは、それまでにも何度もあったことだったから。

それが夢じゃなかったことを確信できたのは、微妙に矛盾したことではあるが、俺が目覚めたベッドに、ほとんど乱れらしい乱れがなかったせいだった。
俺は、日本で一人で寝ている時には、どういうわけか大抵毛布を蹴飛ばす。
俺に蹴飛ばさせた毛布は、朝には、ベッドの端に丸まっているか、床に落ちているのが常だった。

だが、その日目覚めた俺は、寝具のCMでもそこまでは──と思うくらいに綺麗な状態で、毛布とシーツの間に収まっていた。
俺より先に起きた瞬が、そうしてくれたのだろうことは、考えるまでもなかった。

瞬は多分、俺と顔を合わせるのが恥ずかしくて、先にベッドを出たのだろう──と、俺は思った。
思って、やにさがった。

──この時、俺はまだ 幸せな男だった。






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