それは、『エルミタージュのバラ』というタイトルの、氷河王子の手に成る ぶ厚いマンガ本でした。
内容はと言いますと。



ある日突然、世界征服を企む悪の秘密結社ショショッカーが、平和なオロシヤ国に進出してきます。
幼稚園バス乗っ取りや、自動販売機や家庭用ゲームソフトに怪しげなものを紛れ込ませたりと悪事の限りを尽くすショショッカーの皆さんに、オロシヤ国の警察や軍隊は翻弄されていました。

ところが、ある時。
王宮での舞踏会を大混乱に陥れるために、貴族の振りをして王宮に乗り込んできたショショッカーの首領が、瞬王子に一目惚れ。
首領は、オロシヤ国と一緒に瞬王子をも手に入れようと画策を始めます。
瞬王子をオロシヤ国の国王の座につけ、傀儡として操り、その実愛人として可愛がろうという魂胆です。

けれどなにしろ、ショショッカーの首領は、容貌怪異、残虐非道、品性下劣、教養皆無な男でしたので、瞬王子は彼を恐れて避けるばかり。
業を煮やしたショショッカーの首領は、瞬王子を誘拐し、王子を人質にとって、王室にオロシヤ国受け渡しを要求してきました。

瞬王子の命はともかく、そんな悪の組織に屈して王室の権威を損なうなんてことは、あってはいけないことです。
かくして、愛する祖国オロシヤ国を守るために、氷河王子は立ち上がりました。
王子の身を案じる側近たちに、闘いに出ることを禁じられた氷河王子は、仮面をつけて正体を隠し、敢然と悪のアジトに乗り込んでいったのです。

そこで、氷河王子は、ショショッカーの首領に捕らわれ陵辱されかけていた瞬王子を、間一髪のところで救い出しました。
瞬王子は、仮面をつけている氷河王子が、次期王位継承権を巡って対立し合っているライバルだということに気付きません。
瞬王子は、自分を救ってくれた氷河王子に深い感謝を示し、変わらぬ友情を誓いました。
そして、氷河王子は、瞬王子がまたショショッカーにさらわれるようなことにならないよう、瞬王子を王宮ではなく、町の外れにある館にかくまうことにしたのです。

でも本当は。
氷河王子の狙いは別のところにありました。
これは、ライバルの王子を抹殺するいい機会、今ならば、瞬王子殺害の罪をショショッカーの皆さんになすりつけることも可能です。

なのに、氷河王子は悩むのです。
ここで瞬王子を抹殺してしまえば、次期国王の座は自分のもの。
けれど、氷河王子を氷河王子と気付かずに、深い感謝と信頼を寄せてくる瞬王子は健気で可愛らしく、氷河王子はどうしても瞬王子を殺してしまうことができなかったのです。
そう。二人は恋に落ちていたのでした。

耐え切れず心を打ち明けた氷河王子は、瞬王子から同じ思いを伝える言葉を受け取ることができました。
当然の流れとして、二人は熱い愛の一夜に突入し、そして、瞬王子は知るのです。
自分をショショッカーから救い出してくれた人、自分が恋をした相手が誰なのかを。

けれど、氷河王子を心から愛してしまった瞬王子は、もはや彼と相争うことはできませんでした。
恋し合う二人は、やがて力を合わせて、ショショッカーのアジトに乗り込み、その首領を倒し、オロシヤ国を絶体絶命の危機から救います。
全国民に、国難を救った英雄として迎え入れられた二人の王子は、やがて共同統治という形で国を治めることになり、末永く幸せに暮らしました──。



──というもの。






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