「あわよくば一石二鳥、と思っていたのだが……」
「仕方がありませんね。あそこまで色気がないのでは」
「色気がないんじゃない。馬鹿なんだ」

夜の闇と静寂に包まれた聖域で、唯一煌々こうこうと灯りがともり、喧騒に満ちている場所があった。
血気に逸って聖域に乗り込んできた青銅聖闘士たちを追い返した黄金聖闘士たちは、その夜、今は主のいない教皇の間に集まり、やけ酒大会を繰り広げていた。

「まあ、ああいう奴等だから、盾になってやろうとも思うわけだしな」
「アンドロメダとキグナスがそういうことになれば、ハーデスが何らかの画策ができなくなるというのも、確証のないことでしたし」
そもそも、その“画策”が何なのかも明確ではない。
冥界から伝えられた、ハーデスが瞬を使って何かを企んでいるようだという情報はあまり詳細ではなく、具体的にハーデスが何を企んでいるのかということは、その情報を知らせてくれた者にも掴めていないようだった。

「カミュも、冥界がアンドロメダに企んでいる画策の内容まではわからないようでしたし、今回のことは本当にただの親心だったんでしょうね。今度の闘いは、命の保証のない闘いになる」
「弟子の同性愛を応援するとは、実にリベラルな師匠だ」
「どっちにしても、惚れ合った者同士が助平なことをしても、汚れたことにはならんだろうよ」
アルデバランの言葉に、他の黄金聖闘士たちは少々諦観混じりに肩をすくめた。

「色気不足の大馬鹿者たちでも、仲間のために聖域に乗り込んでくる彼等の友情と一途な情熱には見るべきものがあるでしょう。彼等はおそらく、ちゃんと乗り越えてくれますよ」
「俺たちの屍を、か」
獅子座の黄金聖闘士が、さほどの悲壮感もなく呟いた言葉に、牡牛座の聖闘士が鷹揚に頷く。
「でなければ、我々が浮かばれない」

次に始まる闘いは死が必至の熾烈なものになるだろう──と、それは、黄金聖闘士全員に共通した認識だった。
敵はなにしろ、人の死を支配する神なのである。






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