「わざわざ正月から食らうほどのものか、あれが!」

星矢と紫龍の驚きは、氷河のその言葉で更に大きなものになった。
よもや、まさか、そんな言葉を氷河の口から聞くことがあろうとは。
たった今 地球が崩壊しても、星矢と紫龍はさほど驚かなかったに違いない。
それほどに、彼等は氷河のその暴言に驚いたのである。

「あ……あんなものって、おまえ、いつもそれを食いたがってたじゃないか」
「うむ。あれを食いたがっていることがおまえのアイデンテティだと、俺たちは認識していたぞ」
「俺がいつ、あんなものを食いたがった!」

紫龍たちのその認識が、もし間違っていたのだとしたら、アテナが正義だという考えも改めなければならなくなるだろう。
星矢と紫龍が信じてきたものを真っ向から否定しつつ、氷河は彼の怒りを怒り続けた。

「正月からあんなもの食って、喉につまらせて病院行きなんて恥ずかしいことになったらどうするんだ!」
また妙に露骨な氷河の例え話に、星矢が我知らず顔を歪める。
喉に詰まらせるほど瞬の何かは巨大なのだろーかと考えかけて、星矢は慌てて、首を左右に振った。
そして、おそらく自分が考えた何かとは別の何かのことを氷河は言っているのだと、必死に自分に言い聞かせる。

「の……喉に詰まらせるような食い方をしなきゃいいじゃないか」
「俺は食いつけていないから、そのあたりの加減がわからんのだ!」
「食いつけてないって、おまえくらいあれを食いまくってる男は、日本広しと言えども、なかなかいないと思うぞ」
「おまえらはいったい何を言ってるんだ! とにかく姫初めなんてくだらないイベントは、俺は絶対にお断りだぞ。あんな気持ちの悪いもの、見るのも嫌だ!」

「…………」
氷河の、断固とした拒絶に、星矢と紫龍は本気で言葉を失った。






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