「去年は、あの芸無しと言われていたアイオリアが、『えーい面倒、巨人の星風ちゃぶ台返し』のショートコントで優勝した。私の『アテナの像氷の棺封印』は選外だった」
妥当な評価である。

「その前は、シャカの『数珠手繰り口裂け女風にたーり付き』が優勝。私の『アテナ神殿氷の棺化』はアテナのお叱りを受けた」
当然の処置である。

「その前は、ミロの『爪が伸びます伸びますコント55号風』が優勝、私の『双魚宮のバラ園  氷の棺化』はアフロディーテの恨みを買った」
「あんたには、氷の棺を作ること以外、能がないのかっ !! 」

そんな話を聞かされてなお、師に対する尊敬の心を保つことができたとしたら、氷河は聖人である。
もしくは大馬鹿である。
氷河はごく普通の(?)一介の聖闘士だった。
常識的な幸福を求める、平凡な(?)ただの聖闘士だったのである。

黄金聖闘士たちの実年齢が偲ばれる芸の話を聞かされるだけなら──優れたネタは時を越えて普遍ということなのかもしれないが──氷河も脱力するだけで済んでいたことだろう。
だが、己れの師のあまりの無能無芸さに、氷河の脱力は憤怒に変わってしまったのである。
嫌な予感──が、氷河の怒りに拍車をかけていた。






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