髪も金、着物も金、帯も金、足袋も金、草履も金、そして、ターミネーター風サングラス。
清水の舞台から飛び降りる覚悟で、氷河は、そのキンキラキンの金ラメ衣装を身にまとった。
金ラメのキンキラキンの光が、三面になっている姿見の鏡面に反射し、幾倍にも増幅され、周囲を真昼のように照らし出す(もともと真昼だったが)。

氷河は、鏡に映った己れの姿を正視することができなかった。
キンキラキンの着物が眩しかったからではない。
カミュ持参のサングラスは、日食や太陽黒点はもちろん、金星の日面通過すら肉眼で見ることができるほど強力なカバー力を持つ代物だったため、氷河は、その気になれば、キンキラキンの着物を着た自身の姿を見ることは可能だった。
氷河にそれをさせなかったのは、屈辱と恥辱に反発する感情──つまりは彼のプライドだった。

「わーっはっはっはっは! 素晴らしい! 素晴らしいぞ、氷河!」
サングラス越しにも眩しい弟子の晴れ姿を眺め、カミュは、遠慮会釈のない大爆笑を氷河の部屋中に響かせた。
「これなら、踊りまで踊らなくても優勝できるかもしれない。何と滑稽で恥ずかしい姿なんだ!」

(こいつは〜〜〜っ !! )
いっそ殴り殺してやろうかと、氷河が彼の師を睨みつけた時だった。

「あなたは誰ですっ!」
不審人物を厳しく誰何すいかする声に続いて、
「うわあっ!」
という瞬の悲鳴が、城戸邸の庭から、氷河の耳に届けられたのは。






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