「あ……ありがとうございます。マ……マチュケン聖闘士……さん?」
危ういところを救われた瞬が、自らを救ってくれた謎の人物に、礼儀正しく謝意を示す。

瞬を危地から救ったのが氷河──もとい、マチュケン聖闘士──なら、瞬を危地に陥らせたのもまた氷河──もとい、マチュケン聖闘士──だったのだが、瞬はその事実には思い至っていないようだった。
眩しい金ラメの着物の前で、まともに目を開けることができずにいる瞬は、両目を両手で覆ったままで、マチュケン聖闘士に深いお辞儀をした。

「いや、おまえが無事なら、それでいい。ではさらば」
とにかく自分の正体を瞬に知られたくなかった氷河は、それだけを言うと、超光速で瞬の前から逃げ出したのである。






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