氷河がそんな雑誌を購入していたということが、瞬にはとてつもなく大きな衝撃だったのである。
氷河に『好きだ』と告げられた時、確かに瞬は『僕も』と返さなかった。
そのあともずっと、氷河に答えることをせずにいた。

だが、だからといって──『好きだ』と告げた相手に脈がないと思い込んだのだとしても──氷河がそんな雑誌で“瞬の次”を探すようなことがありえるだろうか。
そんなことがあっていいのだろうか。

もしかしたら氷河は、その雑誌の本来の使用目的とは別の情報を目当てに、その本を購入したのではないかと、瞬は疑ってみた──そう考えようとした。
だが、それを確かめるためには、瞬はその本を購入してみなければならない。
瞬は、人目のある書店でそんな雑誌を手にとり、レジに持っていく勇気を持てなかった。
オンライン書店で取り寄せることもできるようだったが、そもそもそんな本に触りたくない。

そんな雑誌を、氷河は平気で購入したのだ──。
わざわざ知り合いに出会う可能性の低い書店を選んでその雑誌を購入したという事実だけでも、氷河の購入目的は明らかだった。

そういう結論に辿り着いた途端、瞬は吐き気をおぼえた。
そんなことをする氷河は、瞬の知っている氷河ではなく、瞬が好きになった氷河でもなかった。






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