そのことがあってから、氷河の外出は以前にも増して頻繁になっていった。
というより、ほぼ連日、午前9時には城戸邸を出て、夜遅く帰ってくる日が続いていた。

もしかしなくても氷河はあの雑誌に掲載されていた者(たち)と会っているに違いない──そう思うと、瞬は到底心穏やかではいられなかったのである。
最初は驚愕が、次には不信と苛立ちが、そして最後には胸が焼けつくような妬みの感情が、瞬の心を支配した。
それは妬まずにいられることではなかった。
氷河が、瞬に教えてくれるはずだったことを、他の誰かと実践しているかもしれないのだから。

瞬は、だが、氷河には何も言わなかった。
責めることも なじることもしなかった。
元はといえば、氷河に明確な意思表示をしていなかった自分が悪いのだということが わかっていたから、である。
それでも氷河は自分を好きでいてくれるに違いないと信じ込んでいた自らの思いあがりと愚かさが、瞬は恥ずかしく──そして、悲しかった。






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