「カミュ先生に謝っちゃった方がよくない? でないとまた氷の柱に閉じ込められちゃうんでしょう?」
お陽様の光も届かないはずなのに洞窟の奥にある広場が真昼のように明るいのは、カミュの魔法のせいなのでしょうか。
魔法の光を淡く反射させている水晶のようにぴかぴかの床に、ヒョウガとシュンは二人並んで体育座り。
シュンは心配顔で、ヒョウガの横顔を見詰め、尋ねました。

けれどヒョウガは相変わらず反省の色を見せません。
「いいんだ。俺は悪いことしてないから」
「でも、カミュ先生の眉を勝手に変えちゃったんでしょう?」
「俺はカミュのためにしてやったんだ。あの方がカッコいいと思わないか?」
「うん、思うけど……」

当人の望みと違うことを、その方がいいからと押しつけるのは、シュンは、あまりいいことではないような気がしました。
でも二股眉の方がカッコいいのは客観的な事実です。
どちらが正しいことなのか、どちらがいいことなのか、シュンにはよくわかりませんでした。
シュンにはそれはとても重要な問題のような気がしたのですが、ヒョウガはそんなことはどうでもいいことだと考えているようで、彼はさっさと話題を別のことに変えてしまいました。

「シュン。半年経ったら、また俺に会いに来てくれるか?」
「来てもいいの? あの……僕、男の子だけど……」
それはやっぱり、いつまでも秘密にしておけることではありません。
ためらいがちに、シュンはヒョウガに真実を告白したのですが、ヒョウガにはそれもあんまり重要な問題ではなかったようでした。

「へ、ほんとか? こんなに可愛いのに? びっくり〜」
「それでも、来てもいい……?」
「もちろんさぁ。約束だぞ」
屈託のない様子でそう言ったヒョウガは、それから突然身体の向きを変えて、シュンのほっぺにキスをしてきたのです。

「あ……」
男の子だということは正直に言ったのですから、それはお友だちのキスのはず。
でも、ヒョウガにキスされた時、シュンの胸はどきどき大きく高鳴りました。
いったいどうしてこんなに心臓がどきどきするんだろう? と不思議な気持ちになりながら、シュンはヒョウガにこっくりと頷いたのでした。






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