十数年間そこにあり続けた氷の棺は消えていました。 消し去ったのは、シュンではなくヒョウガでした。 氷の棺を自らの力で消し去ったヒョウガは、水晶の床に力なく倒れているシュンの側に駆け寄り、その身体を抱き上げました。 そして、力を使いすぎたせいでよろめく足を叱咤して、シュンを洞窟の外に運んだのです。 冷えきったシュンの身体を少しでも暖かいところ――お陽さまの下に――連れていくために。 まるでヒョウガが氷の棺を消し去り自由を手に入れることを見越していたように――洞窟の外でヒョウガを待っていたのは、魔法使いのカミュとアルビオレでした。 「見事だ、ヒョウガ」 ヒョウガは、カミュに褒められたのは、それが初めてでした。 シュンの命の火が消えかけている時に師に褒められても、ヒョウガは少しも嬉しくありませんでしたけれど。 「シュン、頑張ったな」 カミュと共にいたヒョウガの見知らぬ金髪の男が、ヒョウガに抱きかかえられているシュンの身体に、不思議に温かい何かを送り込みます。 本来なら美形の男がシュンに何かをするのは、ヒョウガには許し難いことでしたが、今ばかりはヒョウガも彼の行為を拒否することはできませんでした。 アルビオレの ありとあらゆるものを温める力が、冷えきったシュンの身体と心を温めます。 やがて、青白く固く閉じられていたシュンの瞼がゆっくりと開き、ヒョウガは、シュンの綺麗な瞳が自分の姿を映し出すのを確かめることができたのです。 「ヒョウガ……先生……?」 シュンの唇がヒョウガの名を形作った時、ヒョウガはものも言わずにシュンの身体を強く抱きしめていました。 |