敵の急襲に慣れていた聖闘士たちには、それは小競り合いレベルの些細な出来事にすぎなかった。
シュンがその場に居合わせていなければ、そんな敵のことなど、彼等は半日程度で忘れ去っていただろうほどの。
アテナの聖域への帰座を待ちかねていたように聖域に奇襲を仕掛けてきた敵は、数だけは多かったが、強力な神の庇護を得ているわけでもない 烏合の衆のようなものだった。

「やっと人間様の出番が来たぜ! シュン、おまえは沙織さんの側で大人しくしてろよ!」
喜び勇んでアテナ神殿を飛び出した星矢を、彼の仲間たちが追う。
敵にさほどの脅威も感じていなかった沙織は、腕にシュンを抱きかかえて、異様に張り切っている星矢の様子に苦笑しながら、彼女の聖闘士たちの出陣を見送ったのである。

「あ……シュン……!」
その沙織の腕からシュンがすり抜けたのは、ほんの一瞬の出来事だった。
沙織が呼び戻そうとするより早く、シュンは氷河たちの後を追って、聖域のいずこかに走り去ってしまっていたのである。





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