その夜、瞬はいつもより盛大に恥ずかしがることになりました。
氷河の裸を見ることになったからではなく、氷河に自分の裸体を見られたから――です。
なんだか自分でも思いがけない反応を示す身体、雨あられと降り注ぐ甘い言葉と、氷河が自分のせいで我を失い陶酔する様は、瞬には新鮮な驚きで、恥ずかしくて嬉しくて、瞬はすっかり二人で過ごす夜に酔ってしまいました。

すべてが、瞬には信じられない出来事で、夢のような出来事でした。
そんなふうに――二人はそういう仲になったのです。


「おまえの兄はおいおい呼び戻してやる。社会の不平等への憤りを窃盗なんて不毛な行為に発展させるあたり、あまり俺とは気が合いそうにないが、国を憂える者には変わりあるまい」
氷河は望みのものを手に入れて、瞬の願いも叶えてやれて、大団円のつもりでいるようでした。
幾度も自分のものにした瞬の身体を、二度と離すものかと言わんばかりに抱き寄せ、瞬の肩や胸に繰り返し唇で触れながら、氷河は、瞬の兄の赦免を瞬に約束してくれました。
それは瞬にとってとても嬉しいことだったのですが――。

けれど、実は問題は全く解決していないということを、瞬は知っていました。
なにしろ氷河は、相変わらず女性に興味のない王子様のままなのです。
「氷河が、女の子じゃない僕とこんなことになった――って知ったら、王様はきっとがっかりするよね……」

問題は、何ひとつ解決していませんでした。






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