信じてはいけないと、いくら自分に言いきかせても、信じずにはいられない――。 それは不思議な感覚でした。 『裏切られることが恐ろしくないのか』と自身に問えば、『恐ろしい』という答えが返ってきます。 それでも信じたいのです。 信じずにいられないのです。 氷河は既に瞬を信じかけていました――信じてしまっていました。 だから魔女の呪いが発動して、その男が氷河の城にやってきたのでしょう。 それは、都にいるカーサ国王の遣わした使者でした。 おそらく国王は、氷河が領民に自らの財を分け与え始めたという噂を聞きつけたに違いありません。 国王からの使者は、瞬に向かって言いました。 「まだるっこしいことはやめて、一刻も早く公爵の命を奪え。そうすればこの国の民は救われるのだ――と陛下からのご命令です――厳命です」 瞬はその時、国王を非難する氷河の言葉が真実で、国王こそが醜い化け物のような心を隠す仮面をかぶっていたことを確信したのです。 瞬が脳裏に思い浮かべた国王の姿は、醜く歪んでいました。 |