それは、信じている相手にしか見せられない無防備でした。
恐れも 恥ずかしい気持ちもありましたが、それらの感情は、氷河を信じる心が打ち消してくれました。
そんなふうにして互いに歓喜を尽くし合った翌朝、瞬は、朝の光の中でその奇跡を見付けたのです。
もっとも最初は瞬は、それが奇跡の跡とは気付いていなかったのですけれど。

「あ、ごめんなさい。これ、僕がつけた傷……」
それは、昨夜あまりに強く激しく氷河に抱きしめられた瞬が、彼の激情に耐えるために彼の肩に押し付けた爪の跡でした。
その跡が消えずに、氷河の肩に残っていたのです。
「傷……?」
傷跡が消えていない――その意味を、二人は、朝の眩しい光の中で同時に悟ったのです。

「ああ、氷河……!」
二人はもう一度しっかりと抱きしめ合いました。
呪いは解けていたのです。
おそらく、瞬が氷河を信じた時ではなく、氷河が瞬を信じた その時に。

愛とは、信頼とは、まず自分が与えなければ与えられないもの、『本当に得た』とは言い難いもの。
真実の愛と信頼を氷河が瞬に与えられた証は、氷河が瞬を信じることでのみ確かめられるものだったのでした。






【next】