その青銅製の壺が星の子学園の物置にあることは、この学園で育ち、一度でも学園内を探検したことがある子供なら誰もが知っていることだった。 星矢がその壺の存在を知ったのは、もう10年以上前になる。 高さは50センチほど、中途半端に大きい上に重い。 何やら凝った浮き彫りが施されてはいたが、さほど雅やかでも繊細でも派手でもなく、要するに飾ってその美しさを楽しめるものではない。 値札にしては読みにくい文字が書かれた紙で、木製の蓋に封がされているのも、どことなく不気味で、埃まみれのその壺を発見した時、まだ幼かった星矢は一瞬顔をしかめたきり、すぐにその脇に落ちていたブリキの玩具に興味を移してしまったのだった。 いつからそこにあったのかを誰も知らないその壺は、それから更に10年以上、星の子学園の物置の片隅に打ち捨てられていたのである。 |