決めるのは二人なのだということは、瞬も知っていた。 否、自分だけなのだということを、瞬は知っていた。 氷河はおそらく、自身が置かれている状況を負い目に考えて、何も決められない。 瞬には、それがわかっていた。 そして瞬は――氷河が青銅の壺に囚われているように、瞬もまた、自分自身を縛る鎖に囚われていたのである。 自分が無力な子供だということ、氷河に与えられるものを何ひとつ持っていないこと、氷河を無理矢理自由にすることで、自分は本当に彼を幸せにしてやることができるのだろうかという不安と自信のなさ――。 青銅の壺のようにはっきりした形を持っていなくても、人は結局誰もが何かに囚われながら生きているのだ。 その そして、その勇気を生むものは――瞬は 氷河の心と彼の青い瞳を思うことで、それを奮い起こした。 その日、瞬は一大決心をして、これまで毎日そうしていたようにバナナを1本持ち、星の子学園にいる星矢の許を訪ねた。 食べ終えたバナナの皮を手にした星矢が、いつものようにあの壺が置かれている物置に向かおうとするのを引きとどめる。 「今日は僕が行く。その皮、ちょうだい」 「瞬?」 そう言って唇を引き結んだ瞬の緊張した顔を見て、星矢は瞬の決意を察したのである。 瞬は、長い付き合いの友だちに背中を押してほしくて自分の許にやってきたのだということが、星矢にはわかった。 「それがいい。頑張れよ、瞬」 星矢はもちろん、愛と友情をこめて、一大決心をしたらしい幼馴染みの背中を押してやったのである。 |