ハイノ王子には、『青い目さん』という恋人がいました。
王子が貧しい娘とつきあっていることを知った王様とお后様は、その香りを嗅ぐと 自分のいちばん大切なものを忘れてしまうという魔法の花を使って、ハイノ王子に青い目さんのことを忘れさせてしまいます。
青い目さんを忘れて旅に出たハイノ王子。
彼は、旅の途中で鬼火の沼の女王に囚われてしまいます。
そのことを知った青い目さんは、ハイノ王子を助けるために彼が囚われている沼に駆けつけました。
そして、「僕はもうだめだ」「沈むよ、溺れてしまうよ」と弱音を吐くハイノ王子を、沼から連れ出そうとしたのです。
鬼火の沼の女王がハイノ王子を逃がすまいとしてハイノ王子の腕を掴みます。
沼の女王は実体のない幻想にすぎないのに、彼女に腕を掴まれたハイノ王子はその手を振りほどくことができません。
そんなふうに動けずにいるハイノ王子の様子を見た青い目さんは、王子の剣を使って、女王に掴まれているハイノ王子の右手を手首から切り落としてしまいました。
そして、「腕が焼けるよ、青い目さん」と訴えるハイノ王子を抱きかかえるようにして、やっとのことで沼の岸にあがったのです。
青い目さんはハイノ王子を王様とお后様のところに連れ戻すと、そのまま自分の小さな家に帰ろうとしました。
今は息子を救ってもらった感謝の気持ちでいっぱいの王様とお后様は青い目さんを引きとめ、ハイノ王子と結婚してくれるよう頼むのでした。
そして、二人の結婚式。
誓いの儀式に臨んだハイノ王子は、自分が手を失ったことを忘れて 神父に左手を差し出しました。
神父がハイノ王子の手首に触れると、不思議なことにそこから新しい手首が生えてきたのです。
青い目さんとハイノ王子は二人の手を重ねて互いに愛を誓い合い、その誓いは二人が天に召される時まで破られることはありませんでした。
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