ゲッシュ――神への誓約。
騎士の命を守り、かつ縛るもの。
神の加護の代償は、騎士自身の命。
自ら望んで、なぜ人はそんな誓いを行なうのか。
以前は不思議とも不条理とも思わなかったことを、シュンは疑問に思うようになっていた。

人はなぜ、そんなもので自らを縛るのか。
それほどまでに神の加護が――自らの勝利と成功を保証してくれるものが欲しいのか。
望みが叶わないこと、努力が実らず夢半ばに倒れることが、人にはそれほど耐え難いことなのだろうか――と。

それが必要な理由もわからないではない。
ゲッシュは騎士に課せられた法である。
力を持つ者は、自らを戒め律することができなければならない。
だが人の心は弱くおごりやすく、力を持つ者の当然の義務を貫き通すことができない。

シュンは、何かにすがらなければ生きていられない人間の心弱さが悲しかった。
シュン自身がそうであったからなおさら、その事実が悲しかった。






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